Blog, ハンガリー
あまりにも無自覚にあまりにも遠く
ブダペストではオペラ座や教会や幾つかの博物館に行ったけど、中でもとりわけ思い出深い音楽史博物館のことを書き残しておく。
ハンガリーは偉大な音楽家を数多く輩出している。
特に有名なのはリスト、 バルトーク、コダーイの3人じゃないかと思う。
ここブダペストでは、3人の住居がそれぞれ記念館として公開されている。
素人趣味の範疇とはいえ自分も一応演奏家の端くれとして、ここはひとつ3人の家巡りでもしてみるかと思ったんだけど、実はこのお三方にはそんなに思い入れがない。
(「それでも演奏家か」と石を投げられそうだ。。すみません!)
リスト先生についてはピアノコンクールの記事に記載した通り。
バルトーク先生については「舞踏組曲」しか知らない。
あれかっこいいよなぁ。
コダーイ先生については「ガランタ舞曲」だけマンドリンオーケストラで弾かせてもらったことがある。
めちゃめちゃかっこよくて面白い曲なんだけど、もう「馬鹿じゃないの」ってくらい難しかった。
CD買ったしラフォルジュネでも聴きに行ったなぁ。
あと「コダーイ・ゾルターン」って名前がかっこよくて好き。
うん、コダーイ先生だけ少し思い入れあるかな。
ただ、コダーイ記念館も事前に電話予約しないと開けてくれないとかで、若干ハードルが高いのだ。
そんなこんなで目をつけたのが先述の「音楽史博物館」。
この博物館、ハンガリー音楽の歴史とともに、先述した3人の所縁の品も展示しているといういいとこ取り博物館なのだ!
まさにミーハー音楽ファンの自分のためにあるような博物館だ(←)
そして何よりこの博物館には、同じくハンガリー出身の音楽家であるエルンスト・フォン・ドホナーニに関連する品々も展示されている!
実はこのドホナーニ先生に関しては自分、結構思い入れがあります。
いや、この人の曲自体は他と同様1曲しか知らないんだけど、その1曲にめちゃめちゃ苦しめられたからね…!
あれからもう8カ月くらい経つのかー。
というわけでやってきたこちらが音楽史博物館。
王宮の丘の一角にあるんだけど、この辺りだけ何故か恐ろしくひっそりとしている。
そして「無人の宮殿」同様恐ろしく空いていた。
ちょっと腰が引けるけど早速行ってみよー!
いきなりバルトーク先生の直筆の手紙!
バルトークファンにはたまらんのでしょうなー
館内の複数箇所に映像or音楽再生用のパソコンが設置されている。
バルトーク先生の当時のピアノ演奏動画なんかも観ることができた。
こちらはコダーイ先生がバルトーク先生へ向けた直筆の手紙。
2人は仲が良く、一緒にハンガリーの各地に赴いて民族音楽を収集してまわったそうだ。
バルトーク先生(左)とコダーイ先生(右)のツーショット写真。
ちなみに2人とも、ピアノコンクールで訪れたあのリスト音楽院出身。
それにしてもコダーイ先生のビジュアルがイメージ通り過ぎる。
若かりし頃のバルトーク先生。
なかなかのイケメンですな。
モテたんだろうなー(何故こういう下世話な妄想しかできないのか)
そして遂に…
満を持して!
ドホナーニ先生見参!!
この博物館、ドホナーニ先生の品が1番充実していた。
晩年のドホナーニ先生とバルトーク先生。
2人はリスト音楽院で同窓生だったそうですね。
舞踏組曲初演の指揮をしたのもドホナーニ先生。
最晩年のドホナーニ先生とその奥様。
微笑ましい写真だなーと思ったら「third wife」って書いてあってずーん。
続いて楽器コーナーへ。
各時代の貴重な楽器が大量に展示されている。
解説を見ると「ハンガリー版バグパイプ」とあった。
おお、確かによく見るとバグパイプだ。
スコットランドのと印象が違いすぎてわからなかった。
ビオラ・ダ・ガンバ!
生で見たの初めてかも。
生で聴いたらどんな感じなのかなー
18世紀のオルガン。
譜面台横に燭台が付いていることに当時を感じる。
6人アンサンブル用の譜面台!
こんなんあるのかー知らんかった。
かっこいいけどスペース取るなぁ(我ながら残念な発想)
綺麗だなー
ウィーンの「Johann Michael RUDERT」製だそうです(さっぱりわからん)
やっぱりああいう音なのかなー。
なんじゃこりゃ?
調べてみたところ、「ツィンバロム」というハンガリー伝統の打弦楽器だった。
どんな音なんだろう?
しかし世界にはほんといろんな楽器があるな〜
ウロウロしていたら、スタッフのおばあちゃんが、なんとこのクラビコードを弾かせてくれた!
想像以上にビンビンした音が出た。
いや〜面白かった音楽史博物館!
しかも入館料たったの600フォリント(¥218くらい)。
さぁ帰るかーと思ったら、受付のスタッフさんが声をかけてきた。
「今夜ちょうどここでコンサートあるけど聴く? 同じチケットで入れるよ」と。
え? このチケット(¥218)でコンサートが聴けるってこと…?
何その棚からぼた餅。
もちろん聴きます。聴かせてください。
コンサートは19時からなので、それまで王宮の丘をウロウロして時間を潰すことにした。
が、途中で用事を思い出してどうしてもネットを使いたくなり、ついスタバに入ってしまった。
キャラメルマキアートのショートサイズがお値段なんと1,290フォリント!(¥469くらい)
日本だったら普通だけど、ここブダペストでは超絶強気価格。
それでも客が入るんだからスタバって凄いよなー
18時45分くらいに音楽史博物館へ戻って、いざコンサートへ。
通されたのは小さな「部屋」だった。
自分の知る「音楽ホール」とは全然違う空間。
まさに「室内楽」といった雰囲気の。
サロンコンサートとか思い浮かべる感じの。
こんなところで生音が聴けちゃうのか。
19時前になると客席はすべて埋まり、4人の奏者が入場してきた。
構成はクラリネット、フルート、ファゴット、チェンバロ。
解説がマジャール語だったので残念ながら誰の何の曲なのかわからなかったけど、バロック音楽を何曲か演奏するようだった。
奏者が交代で曲の説明をしながら演奏していくカジュアルなスタイル。
お客さんたちもとってもカジュアルな雰囲気だった。
改めて、ここではクラシック音楽との距離が近いんだなと感じた。
演奏が始まると、音の生々しさに驚いた。
そもそも楽器自体が当時の古楽器を使っているようだった。
(弾いたことないからわからないけど現代楽器よりさぞ弾きにくいんじゃないかと想像する)
さらに、演奏空間が音響設備のない「部屋」なので、リバーブ効果が全くない。
バロック時代、貴族たちは実際に、こういう距離感で、こういう空気の中で音楽に親しんでいたんだろうか。
なんだか自分が今いる空間が、今まで過ごしてきた世界とは随分かけ離れているように感じた。
自分はあまりにも無自覚のまま、あまりにも遠くに来てしまったんじゃないかと思った。
ついさっきまで「憧れのヨーロッパだ!」なんつってのほほんと観光してたのに、突然実感した「距離」に、ここにきてビビってしまったのだ。
こんな感覚は出国以来初めてだった。
コンサートは1時間半ほどで終了した。
素晴らしい演奏だった。
てっきり30分くらいのミニコンサートかと思っていたから、充実した内容に驚いた。
(なんてったって¥218)
ぼーっとしながら日本人宿アンダンテに帰ってきた。
自分を見失いそうになるくらい濃い時間だった。
色々と自覚が足りなすぎるのかもしれない。
宿のみんなの顔を見て少しホッとした。
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コメント4件
マーチャーシュ | 2016.09.23 6:40
ハンガリーにいらっしゃるなら、洪日関係史にも興味がわくといいですね。
https://www.facebook.com/hungarybukyoku/
https://independent.academia.edu/japanmagyarkapcsolattortenet
シモーネ | 2016.09.23 6:55
>Ljs
Exactly!
Also I was surprised.
Especially in Hungary, everything is so cheap!
シモーネ | 2016.09.23 6:58
>マーチャーシュさん
ハンガリーと日本の関係、全く知りませんでした…!
教えてくださってありがとうございます。
現在はオーストリアにいますが、ブダペストにはいずれまた絶対行きたいと思っていますし、それ以前にそもそも洪日関係史は知っておきたいと強く感じましたので、これから学んでみます!
Ljs | 2016.09.22 17:59
In Europe, prices are lower than I thought. Lucky you!