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「色々と合法」の意味

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2016/10/12
デュッセルドルフ→アムステルダム

 
今日は12日間滞在したドイツを離れ、ヨーロッパ5カ国目オランダに移動する。

オランダのアムステルダムは、機会があれば一度行ってみたいと思っていた都市だった。
理由は2つ。
1つは、出国前に受けたコーヒー占いで「オランダでチューリップ農家の御曹司と恋に落ちる」という結果が出たからだ。
何それ行くしかない!と当時は思った。
もう1つは、オランダに関する自分のあやふやなイメージを、実際に訪れることで明確にしたいという気持ちがあったからだ。

「あやふななイメージ」とはすなわち、キャッチコピー風に言うならばこうだ。
色々と合法の国オランダ

 
おそらく最も有名なのは大麻と売春。
また、同性婚、代理母出産、安楽死も世界に先駆けていち早く合法化されたらしい。

自分がオランダの「色々と合法」な部分について知っているのは、たったこれだけ。
もはや「知っている」と書くことも憚られるほどの、残念すぎる知識量だ。
そこでこの機会に、まずオランダの薬物政策について少し調べてみた。

 
日本含む多くの国が「薬物完全追放主義」なのに対し、オランダは「薬物厳格管理主義」。
「薬物は社会に有害である」という原点は共通で、解決のためのアプローチが異なる。

そのアプローチとは、薬物を「ソフト」と「ハード」に明確に区別し、ソフトドラッグについては使用を認めることで、結果的に社会における薬物被害を最小限に止めるというもの。
ちなみにソフトドラッグとは大麻加工品(ハシシ、マリファナ)、シロシビン、マジックマッシュルームなどで、ハードドラッグには主にヘロイン、コカイン、覚醒剤、モルヒネ等が挙げられる。

 
自分はずっと、大麻もヘロインやコカインと同じ、とにかく「危険薬物だ」という認識しかなかったので、大麻がなぜソフトドラッグなのかピンとこなかった。
そこで大麻についてもう少し調べてみた。

・嗜好品としては「乾燥大麻」「大麻樹脂」「液体大麻」の大きく3種類がある
・摂取方法は喫煙、調理など
・嗜好利用が認められているのはオランダ以外にベルギー、ポルトガル、スペイン、チェコ、スイス、ドイツのベルリン、ウルグアイ、アメリカ合衆国内の2州など
・人体への影響については、相対的な有害性は煙草やアルコールよりも少ないとする医学見解が多い。毒性も低く中毒症状で命に危険が及ぶことはほとんどないとされる。精神疾患や神経系などへの影響は意見が分かれている

 
なるほど、注射で摂取するわけじゃないんだな…(←無知で本当にすみません。。)
確かにぱっと見随分ソフトというか、これらの情報を見る限りは「ほぼほぼ煙草だな」というのが正直な印象だ。

 
そこで次なる疑問は、ハードドラッグと明らかに性質が違うのに、なぜ日本では一緒くたに「危険薬物」とされるのか。

理由の一つには、大麻が他の薬物使用へのとっかかりになってしまうという「ゲートウェイ理論」があるらしい。
流通ルートが近いってことなのかな。
ただ、この理論については国際的には再考察も盛んなのだそうだ。
で、この理論を否定し、まさに真逆の政策をとっているのがオランダだ。
実際オランダにおいてハードドラッグ使用者は減少傾向なのだという。

 
ここまで調べて、つくづく「無知って罪深い」と思った。
自分は今後大麻を嗜好するつもりも積極的に肯定するつもりもないけど、日本から一歩外に出ればもう「知らなかった」では済まされない。
そもそも危険薬物としての立場がこれだけ曖昧なことや、国際的にさまざまな議論があることさえ知らない状態で、海外でそれに出会ったときに日本の常識だけで判断するなんて、横暴極まりない。
大切な人を不用意に傷つけてしまうかもしれないレベルの「無知」だ。

おそらく同性婚、安楽死等に対する「無知」にも同じことが言えるだろう。
自分の見解を持つ上でも、まずは事実を知らないといけない。

 
で、今回のアムステルダム旅行で焦点を当てるのは「売春」。
恐らく世界で最も有名な売春街である「レッドライト(飾り窓)地区」を、直に見たいと思った。
アムステルダムのこの地区は観光スポットとしても人気だ。
でも夜に女1人で歩ける雰囲気なのかわからず、現地のナイトツアーを予約した。

 
さて、デュッセルドルフ→アムステルダムの移動もFlixbusを利用。
約3時間、19ユーロだった。
無事アムステルダムのどこかの駅のバス停に到着し、電車で宿最寄りのアムステルダム中央駅へ。
チケットは全てIC型で、刻印ではなく読み取り機にかざす仕組みだった。
日本のSuicaと似ているのでなんかほっとする。。

 
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アムステルダム中央駅に到着。
東京駅の元デザインはこの駅なのだそうだ。確かに似ている。

 
Maps.meを見たら宿まではまだ遠そうだったので、トラムか何かで行けないかなーと思い案内板を見ていると、ツーリストサポーター的な人が「何かお困りですか」と声をかけてくれた。
宿の場所を伝えると「バスの方が早いですよ」と教えてくれて、乗り場やチケットの買い方を丁寧に教えてくれた。
観光客に優しい街だなぁと感じた。
おかげさまで無事宿に到着。

 
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Stay OK Amsterdam Zeeburg
混合ドミトリー 1泊25ユーロ

ユースホステル協会登録のホステルだから、てっきり男女別部屋かと思って予約したら、実際は混合ドミで驚いた。
ユースホステルって何となく、必ず男女別部屋なもんだと思っていた。
宿自体は綺麗で広々としていて良い宿だった。スタッフさんも親切。
そしてwifi無料だったー! 良かった。。

 
部屋で夕方までダラダラしてから、いよいよツアーの集合場所へ。
今回参加したのはLindbergh ExcursionsのRed Light District Waiking Tour。
(Veltraのサイトで現地申し込みと同価格で予約できます)
バウチャーを受付カウンターでチケットに交換してから出発。

 
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イタリア人のとてもハキハキとした女性ガイドさんだった。
ツアー参加者も世界各国からの旅行者が集まって国際的。
解説は英語だったんだけど、ほとんどわからなかったorz
残念すぎる自分のヒアリング力(´Д` )
このときは結構凹んだ。

 
所々聞き取れた解説と、後で自分で調べたこともあわせて、アムステルダムの飾り窓についてメモしておく。

・飾り窓とは、売春を職業とする女性の職場でありショーウインドウ。下着姿で立ち、お客さんに見てもらい買春してもらう。
・アムステルダムには一時500以上の飾り窓が存在したが、やや治安が悪化し政府が減少政策を開始、現在は300ほどまで減っている
・飾り窓で仕事をするには公的登録をし利用料を支払う。利用料は立地や日によって異なる
・売春者には頻繁な健康診断が義務付けられている
・その他売春買春側それぞれに幾つかルールがある(内容と金額は必ず事前交渉、コンドーム着用など)
・レディボーイの飾り窓もある。女性と勘違いして利用しないよう、レディーボーイの場合はブルーライトになっている

以下、実際に訪れたときの写真とともに。

 
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中央駅のすぐ前、一本裏の道に入っただけでもうそれっぽい雰囲気になった。
アダルト関連のショーウインドウや看板があっけらかんと立ち並ぶ。

 
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そのさらに一本奥の道がもうレッドライト街で、心の準備をする間もなく飾り窓が目に飛び込んできた。
(※飾り窓は撮影禁止)
中心地からこんなに近いなんて! しかも教会のすぐ前。
道が狭めではあるけど、隠されている感は全くない。
人通りも観光客も多く、危ない雰囲気も一切なかった。
個人的には女性一人で歩いても不自然じゃないと思う。

 
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飾り窓以外の有名なサービス店も教えてくれる。
これはpeep showの有名なお店だそうです。
peep showとは覗き穴から見るストリップ。
コインを入れると穴が開いて、時間が来ると途中でも閉じてしまう。
またコインを入れると続きが見れるシステム。
見てみたかったけど、さすがに女一人で入る勇気がなくて諦めた。

 
レッドライト街は想像していたよりもずっと平穏で、歩きやすい雰囲気だった。
おそらく大麻と同じで、厳しい管理のもとしっかりと運営されていることが窺えた。
ビジネスとして確立され、アムステルダムでは普遍的な存在である空気も感じられた。

自分が女性だからなんだろうけど、買春側のイメージがあまり湧かず、売春する女性側のことばかりが気になった。
どれくらいハードな仕事なのか。
どんな経緯でこの職に就いたのか。
普段は何をしているのかなど。

 
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ツアーの最後は「レッドライト・シークレット」ミュージアムの鑑賞。
ここではまさに、売春側のミニドキュメンタリーや、飾り窓の中の構造などを見ることができる。

 
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擬似的に飾り窓の中に立った気分が味わえるスペース。

 
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飾り窓の外から見られている感じを再現した映像も。
これがとてもリアルで、実際に交渉してくるお客さんや、冷やかしで見てくる観光客、何度も何度も往復するストーカーのような男性などが出てくる。

 
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飾り窓の奥にある、サービスを提供する部屋。
交渉が成立すると、この部屋でサービスが終わるまで、飾り窓のカーテンが閉じられる。

 
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道具もたくさん。

 
ここで改めて売春側のことを想像した。
まず、恐ろしくシビアな仕事だと思った。
ビジュアルで常に品定めされ、短時間で交渉し、高品質のサービスを提供し続ける。
自分のすぐ横に美しいライバルたち。
もし自分がと思うと、とても生き残れる気がしない。

そしてそもそもの、性を商品として提供する行為について。
最も強く感じた抵抗感は「怖さ」だった。
特に、飾り窓で覗かれる再現映像を見たとき。
目が合う男性全員に対して「怖い」「気持ち悪い」と感じてしまった。
なんで怖いのか自分でもよくわからなかった。とにかくただひたすら怖いのだ。
不特定多数の他人にジロジロ見られるという点では、バスキングしたときの感覚と少し似ていた。
でも決定的に違うのは、その視線に性への関心があからさまに含まれているかどうかと、(設定として)それを自ら望んでいるという点だ。
システムで完全に安全を保障されて、視線に慣れさえすれば、この恐怖も消えるんだろうか。
わからない。

 
たった数時間だけど、実際に見れて良かった。
一番の収穫は、「色々と合法」なのは、「自由」「奔放」だからではなく、「明確な指針の元で管理されているから」なことを、肌で実感できたこと。
そしてもう一つ、売春という職業に自分なりに向き合うきっかけが生まれたことだ。

 
 
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2016-10-21 | Posted in Blog, オランダNo Comments » 
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