Blog, スペイン
恋い焦がれたあの絵の世界へ
スペインを代表する古都トレド。
この街が持つ歴史はとてつもなく古く、その変遷はなかなかに複雑だ。
紀元前2世紀にローマ帝国がこの地を支配してから、トレドはイベリア半島における重要都市として歴史の表舞台に登場する。
6世紀には西ゴート王国の首都に据えられ、イベリア半島最大のカトリック都市となった。
8世紀にウマイヤ朝支配を受けてからは、今度はイスラム都市として発展。
でも11世紀にカスティーリャ王国に降伏して、再びカトリックに戻る。
さすがイベリア半島、カトリックとイスラムの入れ替わりがめまぐるしい!
おそらくトレドの最大の魅力は、このめまぐるしい歴史を反映して、各文化の共存の軌跡が現在まで残されているところだろう。
イスラム教はそもそも異教徒に寛容な宗教なので、ウマイヤ朝支配を受けてからもトレドには先住のユダヤ教徒、キリスト教徒が住み続けることができた。
さらにその後トレドを征服したカスティーリャ王アルフォンソ6世も異教徒に寛容だったので、イスラム教徒、ユダヤ教徒は引き続き共存を許された。
これによって街の中に各宗教の文化が共存して、互いの知が集結し、トレドは学問・芸術の中心としても発展していったのだそうだ。
因みにヨーロッパに古代ギリシャ哲学が知識として広まったのは、バグダードでアラビア語翻訳された文献がトレドでラテン語翻訳され伝わったかららしい。
つまりヨーロッパの人々はイスラム文化を経てギリシャ文明を学んだということになるから面白い。
ギリシャ哲学を重視したルネサンスにも、トレドにおける多宗教の共存は多大な影響を及ぼしたとされている。
まぁ、きっと実際のところは色々とぶつかり合いもあったんだろうけど、事情を深く知らない自分からすると、こういう寛容な社会は素敵だなぁと思う。
その後15世紀末に異教徒は結局トレドを追い出されちゃうんだけど(´Д` )
迷路のように入り組んだ旧市街の道や中庭付きの住宅はイスラム支配時代の遺産で、門や教会にもゴシック、ルネサンス、バロック、イスラムそれぞれの様式が見受けられるのだという。
この異文化共存の保存状態が評価され、トレド旧市街は1986年に世界遺産に認定された。
さて、前置きが長くなりましたが、自分はこのトレド観光をものっすごく楽しみにしていました!
先述した歴史背景の魅力もさることながら、なんといってもここトレドは
画家エル・グレコの聖地なのだ!
エル・グレコが描いた「トレド景観」の風景を、実際にこの目で観るのが夢だった。
自分のスペイン旅の、いや世界一周旅のハイライトと言っても過言ではない。
そんなトレドへはマドリードから列車で30分、バスだと1時間強で行くことができる。
自分は当然のごとくバスを選択。安いんでね。
往復で10ユーロ弱。
タホ川に囲まれたトレドの旧市街はそんなに広くはない。
普段歩きまくっているバックパッカーなら徒歩のみでも十分周れると思う。
ただ坂がめっちゃ多いけど(´Д` )
バスターミナルから坂を登って、門をくぐって旧市街へ入る。
旧市街の周りにはこんな風にかっこいい城壁と門が残されている。
まず向かうのは「エル・グレコ美術館」。
迷路のような道を楽しみながら旧市街の中心へ進む。
着きました!
こちらがエル・グレコ美術館!
比較的最近改装された近代的な美術館で、エル・グレコの作品が多数所蔵されているのはもちろん、当時の邸宅を模した独特な館内になっているのだそうだ。
チケットを買うべくカウンターに進んだら、なんと無料公開中だった。
休日の一部の時間帯が無料なのは知っていたけど、このときは普通に平日だったのにラッキー!
ありがたく無料で入館。
いやーあるわあるわエルグレコ!
浴びるほどエルグレコ!
舐めまわすようにじっくりと観てきた(←気持ち悪い)
そしていよいよメイン(←自分にとって)の、
「トレド景観と地図」ー!!
すごい!!
本物だ!!(←当たり前)
やばい泣きそう。
囲いもないので、ものすごく近くまで寄れる。
やっぱり生で観ると印象が変わるなー
厳かで格式高くて、それでいて心が穏やかになるような素敵な邸宅だった。
いい美術館だったなぁ!
トレドに来たらオススメです!
さて、この後はいよいよ、この「トレド景観」の実際の風景を拝みに行くのですが、その前にトレド大聖堂に寄ってみることにした。
知らなかったんですが、トレド大聖堂はなんとスペインで一番、さらに世界でも三番目に大きいカテドラルなんだそうで。
(ただ、自分は後日訪れたセビリア大聖堂の方がデカく感じたんですがどうなんだろう? 「大きさ」の定義によるのかも)
こちらがカテドラルの鐘楼。
入場料は9ユーロ。
くうう高い!
でもこのカテドラル、それに値する凄さでした。
おおおお確かにデカイ!
今までたくさんの教会や聖堂を訪れたけど、入った瞬間の迫力はこのカテドラルが圧倒的だった。
キリストの生涯を20の場面で表しているという木彫りの祭壇。
いやーーーすごいです。。
ほんっとうに大きい。
目の前に立つと唖然としてしまう。
そしてここにもエル・グレコ「キリストの聖衣剥奪」!
なんかエル・グレコハンターみたいになってきた。
さて、カテドラルの後は、いよいよトレドを見渡せる丘の上へ。
川に囲まれているので、旧市街外の丘に登るにはまず橋を渡らないといけない。
maps.meのルート検索で最短ルートを見ながら進む。
それにしても、なんって素敵な旧市街!
本当だ、アラブ風の迷路のような雰囲気と、ヨーロッパ然とした街の雰囲気が共存している。
ドン・キホーテの道程としても有名なトレド。
こういう像もたくさん見かけた。
川の方にだいぶ降りてきた。
この川に囲まれた地理的特性が要塞として好都合だったからこそ、各時代の主要都市になり得たんだろうなぁ。
さーそろそろ橋かなーと思ったら、
普段使われてなさそうな船渡し場に誘導されてしまった。
畜生やってくれるじゃねーかmaps.me!
(ルートに橋が入ってなかった時点で気づかなかった自分が悪い)
また街の方に登るのか。。orz
しょうがないので川沿いの散歩道みたいなところを登って橋を目指す。
対岸を観光用の可愛いミニバスが快適そうに走っていた。
あれに乗れば良かったかなーちょっと後悔。
街の東側、タホ川には二本の橋がかかっている。
もう一つの橋が、
エル・グレコのもう一つの絵、「トレド風景」に描かれているこの橋じゃないか!?
おおおお感動…!(違ったらすみません)
なるほど、この絵は今から行く丘の反対側から見たトレドを描いていたんだなー。
こうして実際にその地を訪れると、絵の印象が一気に立体的に感じられるから面白い。
さて、橋を渡ってからは早いです。
ひたすら丘を登るのみ!
途中でさっきの船渡し場を見下ろした。
くそーあそこ船で渡れたらめっちゃ早く着けるじゃねーか!
しかしあの船は何用なんだろう。荷物用?
観光客が乗れることはあるのかな。
15分くらい登って、遂に着いた!
リアル「トレド景観」ー!!
うおおおお興奮MAX!!
信じられない、本当に絵の中の世界に来れてしまった。
で、早速絵と見比べてみたんですが、
お気づきいただけるだろうか。
そう、どうもまだ絵よりも視点が低いんです。
というわけで、さらに上を目指す!
多分、トレドを見下ろせるポイントはこの丘には幾つかあると思うんですが、自分はmaps.meで言うところの
この山頂マークを目指すことにした。
パッと見た感じ、行けそうな場所で一番標高が高そうだったのだ。
来たー!!
これです!!
この景色です自分が観たかったのは!!
泣きました、嬉しくて。
夢がどんどん叶っていく。
こんなに幸せでいいのかな。
1時間くらいここでトレドの町を眺めていた。
ただ、この場所、かなり怖いです。
囲いも何もない高所。
怖くてずっと立てずに座ってた。
日が暮れ始めて、名残惜しく山頂を後にした。
何度も何度も振り返っては、
夕日に照らされるトレドを眺めた。
うん、やっぱり歩いてきて良かった。
観光バスだとこんなにのんびりできないからね。
胸いっぱいでフワフワしたまま、再びバスに乗ってマドリードに戻ってきた。
夢のような時間だった。
きっとこの先の人生で、何度も何度もあの景色を思い出すだろう。
ありがとうトレド!
ありがとうスペインー!
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