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地獄のアラコル湖トレッキング2日目 〜こんな場所が存在していいのか〜

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2016/8/24
アラコル湖トレッキング2日目

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大変恐れ入りますが、前々記事「アラコル湖トレッキング編の前に〜」を未読の方は先にご一読願います。
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7時起床。
我々の不安をよそに、天候はこの上ない快晴だった。
絶好のトレッキング日和、アラコル湖鑑賞日和だ。

 
出発前に、3人で改めて今日の方針を確認した。

まず、なんとしても今日中にアルティン・アラシャンまで辿り着くこと。
何故なら我々はテント装備を持っていない。

でも、もしどう考えても不可能に思えた場合は、途中で引き返すなど臨機応変に判断すること。
つまり最優先は「遭難しないこと」「死なないこと」だ(←当たり前すぎる)

 
ここでキャンプサイト運営側からありがたすぎる提案があった。
ちょうど今日アラコル湖横のキャンプサイトに行く予定だったスタッフが、なんと我々のガイドをしてくれるという。
スタッフはさらに「もしアルティン・アラシャンに辿り着けなくても、アラコル湖横でもテントを借りられるから心配しなくていい」と教えてくれた。

おお…!
ということは、最悪でもアラコル湖にさえ着けば遭難は免れる!
少しだけホッとした。

 
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出発前に有料で朝食も出してもらった。
パスタ料理とお粥とサラダ。どれも美味しい。
ここでこんなにしっかりとした食事をいただけるとは思わなかった。

 
費用をお支払いしていよいよ出発。
テントレンタル、スチームサウナ、お茶やお菓子、朝食、すべて合わせて450ソム(¥676くらい)(内訳未確認)だった。
寝袋や厚手のジャケットまでお借りして、この値段はあまりに安い。
そもそももしかしたらお茶やお菓子代は入っていなかったのかもしれない。
彼らの心のこもったおもてなしが本当に胸に沁みた。

 
我々のガイドを申し出てくれたスタッフは名前をチンギスといった。
チンギス・ハンと同じ名前だ。覚えやすくてありがたい。
キルギスではとてもポピュラーな名前なのだそうだ。

そんな彼はなんと、ガイドをしてくれるだけでなく、我々の荷物を持つと申し出てくれた。
つまりガイド兼ポーターだ。
しかも「お金はいらない」と。

もうなんなのキルギス!!
なんでそんなに優しいの!!
せめてもっとお金とって!!

(あまりにもあんまりなので3人で1,500ソムお支払いしました)

 
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自分は元々荷物が少ないので、寝袋や防寒着を持っているまいちゃんとアリーナの2人分の荷物をチンギスに持ってもらって出発した。
荷物がない分、足取りが昨日よりもずっと軽い!
天気もいいし、これなら行けるかもしれない。

そんな希望を持ったのも束の間、

 
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あまりの道の険しさに愕然とした。
草木がどんどん減って、山は岩肌と化していった。
昨日は崖の迂回箇所以外はまだ「道」の体裁が保たれていたけど、今日はもう道ですらない。
岩肌の間を這うようにへばりついて登っていく。

 
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約2時間登り続けて、2つ目のキャンプサイトに到着した。
ここは1つ目のキャンプサイトと違って運営スタッフが常駐してはおらず、木造の小屋があるのみ。
ガトックは昨日悪天候の中、20kgの荷物を背負って1人でここまで登ったということだ。
改めて凄い人だと思った。
我々など、チンギスというポーターを得たにもかかわらず、もうヘトヘトだ。

 
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キャンプサイトで休憩中、アラコル湖から流れてきているという川の水を飲んでみた。
土っぽいような鉄っぽいような不思議な味で、思わず少し吐き出してしまった。
アリーナ曰くアラコル湖の水はミネラルを豊富に含んでいるそうなので、その味なのかもしれない。
チンギスは「日本人にはきっと慣れない味だよね」と笑っていた。

 
休憩を終えて再出発。
先はまだまだ長い。
アラコル湖を拝むには、さらに山を越えて上に行かなければならない。
しかも道は険しさを増す一方だ。

 
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この角度の斜面を、

 
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こういうゴツゴツした岩の上をよじ登っていく。
もはや「歩く」というより、なんとかして「前に進んでいる」という感覚だった。

 
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登れば登るほど嘘みたいな景色が広がる。
こんな場所に人間が来れる筈がない。来ていい筈がない。
なんで自分は今ここにいるんだろう。
そうかこれは夢だ、自分はきっと悪い夢を見ているんだ…

 
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道がないので、休憩も岩の上。
下を見ると意識が飛びそうになる。
言うまでもなく、落ちたら死ぬ。

 
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最後の山越え。
振り返ると、とうとう緑もないほどの高みに来ていた。

 
何度も足を踏み外しそうになった。
疲労よりも恐怖で心拍が上がった。
崖に這いつくばる度に「死んでたまるか」と自分に言い聞かせた。

 
息が苦しい。
今いったい標高何メートルなんだろう。
もうダメかも。
いやまだ行ける。

 
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
帰りたい。
シャワー浴びたい。
あったかい布団で寝たい。

 
最後の最後には、ほぼ無の境地に至った。
ただただ無心で足を前に動かした。
アラコル湖を見たいという以前に、
「絶対に死なない」
という思いだけが脳内を占めた。

 
そして、最後の岩を乗り越えた先に見えた景色が

 
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これだった。

 
すげー。。。。

なんじゃこりゃ。

世界にはこんな場所があるのか。
あってしまうのか。

 
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太古の昔に神様がこっそりつくった、とっておきの場所なんじゃないかと思うほどの。

 
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実は人が踏み入ってはいけないんじゃないかと思わされるほどの。

 
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未だかつて見たことのない色だ。

 
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しばし感動に打ち震えた。
来るはずのなかった場所。
自分の人生に、まさかこんな瞬間が訪れるなんて。

 
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岩場をしばらく下ると、キャンプサイトが見えてきた。
おいおい凄いところにあるなキャンプサイト!
で、このキャンプサイトまでが遠いんだまた。

 
なんとか無事キャンプサイトに到着して、3人で喜びを分かち合った。
めっちゃ怖かった!
何度も死ぬかと思った!
でも見れたアラコル湖!
よく頑張った!!

 
この時点で時間は15時。
日暮れまでにアルティン・アラシャンを目指すのはもう不可能だ。
それ以前に、まいちゃんと自分はもう一歩も動けないほど体力が限界だった。
いや、この時点で既に限界を越えていた。
結局、問答無用でこのキャンプサイトに1泊することになった。

 
改めて、自分たちが今無事なのはただ運が良かっただけだと思い知った。

もし2箇所のキャンプサイトで泊まれなかったら。
寝袋や防寒具を借りられなかったら。
御飯が食べられなかったら。
チンギスがいなかったら。

どれ一つ欠けても、ここにたどり着くことはできなかったように思う。

さらにラッキーだったのは、ロシア語が話せるアリーナがいてくれたことだ。
彼女がキャンプサイトのスタッフたちやチンギスとロシア語で密にコミュニケーションを取ってくれたおかげで、いつも事がスムーズに進んだ。

アラコル湖が見れたことは本当に本当に嬉しい。
でも、あまりにも無謀だった。浅はかだった。

 
このキャンプサイトには女性スタッフが1人で常駐していて、一つ目のキャンプサイトと同様、お茶やお菓子を振る舞ってくれた。

 
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そして夜には、暖かい麺料理とお粥をつくってくれた。
極寒のアラコル湖の夜に、暖かい料理が染み渡った。

 
とてつもない疲労感と全身の痛さのあまり、到着後はすぐテントで横になった。
夕食後もすぐ床についたけど、身体の痛みは一向に引く気配がなかった。
そしてアラコル湖の夜は恐ろしく冷え込んだ。
チンギスはジャケットとさらに厚手のズボンまで貸してくれたけど、それでも寒さのあまりなかなか寝付けなかった。

こうして2日目の夜が更けていった。

 
 
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2016-09-03 | Posted in Blog, キルギスNo Comments » 
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