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サロメとヨカナーン
世界一周「行きたい所よりやりたいこと」シリーズの中に、
ドイツでオペラ「サロメ」を観劇してみたい
というのがある。
サロメは新約聖書の登場人物で
洗礼者ヨハネの首を所望したとされる女性。
聖人の殉教のシチュエーションは往々にしてショッキングだけど、
このサロメのエピソードもかなり印象的で、
宗教絵画のモチーフとしても頻繁に取り上げられている。
宗教絵画で女性が男性の生首を持っていたら、
ほぼ間違いなくユディトかサロメ。
さらに手に盆を持っていた場合がサロメだ。
(ちなみにユディトは旧約聖書外典で敵の将軍の首を切り取る女性)
***
パレスチナ領主の義娘サロメは、
祝宴の席、義父の前で見事な舞を披露する。
サロメの舞に喜んだ義父は、
サロメが望むものを何でも与えると約束する。
サロメは、義父が捕らえて牢獄していた
洗礼者ヨハネの首が欲しいと答えた。
義父は望みを聞き入れ、牢でヨハネを処刑し、
その首を盆に載せてサロメに与えた。
しかしそれは、実はサロメの意志ではなく、
ヨハネを恨んでいたサロメの母ヘロディアの差し金だった。
***
中世から17世紀頃までの絵画作品は、
基本的にこの新約聖書のシチュエーションなので、
サロメはヨハネの首にあまり興味がない(視線を背けている)様子で
描かれている場合が多い。
でも近代からは赴きが変わる。
これは、イラストレーターであり、詩人であり、
小説家でもあったオーブリー・ビアズリーの作品。
19世紀末にオスカー・ワイルドが発表した戯曲「サロメ」の
挿絵として制作されたものだ。
この戯曲では、新約聖書のストーリーに
こんなアレンジが加えられている。
***
サロメはヨカナーン(ヨハネ)に激しく恋い焦がれ、
その肌や唇の感触を、異常なまでに欲する。
しかしヨカナーンはサロメを拒絶する。
どうしてもヨカナーンを手に入れたいサロメは、
義父に首をねだり、その首に口づけをして恍惚する。
***
この絵はまさに、
サロメがヨカナーンの首にキスするクライマックスのシーン。
猟奇的で、恐ろしく耽美で、
一度見たら忘れられないくらい印象に残った。
初演当時も、生首にキスするというシチュエーションが
衝撃的すぎてスキャンダルになったらしい。
でもこの戯曲の印象は非常に強く、
近代以降サロメを取り上げた作品の多くが影響を受けている。
このオスカー・ワイルドの戯曲がドイツ語に訳され、
それをオペラ化したのがリヒャルト・シュトラウス。
ヒロインのサロメ役は、
危険な幼さとエロティシズム、
さらにドラマティックで高度な歌唱力を求められる
ドイツオペラ随一の難役なんだとか。
映像記録で観てももちろんいいんだけど、
せっかくドイツに行くから、
ぜひ本場の雰囲気で生で観てみたいな。
ちなみにストックホルム症候群と同じで、
こういうアンビバレンスな話も、古今東西たくさんある。
日本だと安珍・清姫伝説とか、
リアルでは阿部定事件なんかも想起される。
月並みな表現だけど、やっぱり女って恐ろしい。
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コメント2件
シモーネ | 2015.10.31 1:16
>BANさん
ええええ!!
すごい!リアルサロメさん、初めて出会いました!(会ってないけど)
てことは、BANさん、ヨハネじゃないですか…!
ヨハネさんと呼んでもいいですか?
BAN | 2015.10.30 16:44
サロメいいですねサロメ。
僕の彼女の本名もサロメです。