Blog, キルギス
地獄のアラコル湖トレッキング1日目 〜すべてはもう遅かった〜
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大変お手数ですが、アラコル湖トレッキング編に入る前に、まずこちらの記事をご一読願います。
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今日からいよいよ2泊3日のアラコル湖トレッキング。
まず初日1日を凌ぐ最低限の食糧を市場で購入。
その後アナの車に乗り麓のスタート地点へ向かった。
スタート地点はとても長閑な村。
ドンキーに乗った村人がアニメの登場人物のようだ。
ちなみにこのコースは入口にゲートが設けてあり、入場料450ソムの支払いが必要だった。
(ロシア人のアリーナは割引価格が適用されていた)
アルティン・アラシャンに先に向かうコースの場合はこの入場料の支払いは無いらしい。
道端には馬や牛がまるで犬のようなノリでのんびり佇んでいる。
こっちもつい犬に接するようなノリで触りたくなってしまう。
天気も晴れてきて絶好のハイキング日和。
まいちゃんのTシャツの赤とアリーナのパーカーの青が映えて清々しい。
このときはまだ浮かれハイキング気分でサクサク歩いていた。
最初の休憩で1人の男性トレッカーと出会った。
インドネシア人のガトック。
現在はドイツ在住で山登り大好き、英語ペラペラ。
ここで出会ったのも何かの縁、ここから先を一緒に登ることになった。
ぐんぐん歩いていると、いつの間にか随分高い所まで来た。
軽装の自分とガトックのペースが一緒で、気がついたらまいちゃん・アリーナと随分離れてしまった。
しかしガトックの荷物はなんと20kg以上らしい。
自分が普段転がしているコロコロより重い。。信じられん。
超立派な一眼レフに望遠レンズも持ってるし。
ちなみにこの時の自分のバッグは多分3kgもない。
引き続き歩いていると、向こう側からこちらに来るトレッカーと出会った。
彼らはこのコースを自分たちと逆方向で歩いているのだ。
そんな彼らが、「ここから20分くらい先に行くと道が無くなっている」と教えてくれた。
道が川に飲み込まれてしまっているので、右側の崖を登ってその部分を越えるしかないと言う。
え、道が無いって、そんなことあるの…?
そもそも崖って登れるもんなの?
自分はこの話にすっかりビビってしまったけど、ガトックは「あーはいはい、よくあるよね」というノリで冷静に聞いていた。
これはもうガトックに着いていくしかないと腹をくくった。
しばらく進むと、彼らが目印だと言っていた車があって、横に座っていたローカルのおじさんが崖を指差した。
どうやらここから崖側に迂回するらしい。
で、この崖が本当に崖でして、登りもさることながら下りがめちゃめちゃ怖かった。
「いやいや、これ道ちゃうやん」「落ちたら終わるヤツやん」とか言いながら必死の形相で降りた。
この時「あれ、なんだか思ってたノリと違うな」とやっと気づき始めたが、もう遅い。
ちなみに手提げ袋で持っていた果物はこのときに崖から落としてしまった。
崖下に転がり落ちていく桃やブドウが自分と重なって見えてしまい、恐怖に震え上がったことは言うまでもない。
崖を下り終えて通常ルートに戻った時に撮った写真。
この右側の部分を登って下って迂回してきた。
道を教えてくれたローカルのおじさんが何故か我々に着いてきて、その先の道を勝手に案内し始めてしまった。
おじさんがあの分岐点にいてくれないと、後方にいるまいちゃんとアリーナがここまで辿り着けないんじゃないかと心配になったけど、ガトックは「そんなことないよ、わかりやすかったじゃん」と言った。
え、あれでわかりやすいの…?
この辺りでトレッカー初心者の自分の罪深さにも少しずつ気づき始めたが、もう遅い。
通常ルートに戻ってしばらくするととても綺麗な川原に出た。
完全にアルプスの少女ハイジの世界だ。
一時疲れも不安も忘れてガトックと夢中で写真を撮り合った。
だかいかんせん天気がよくない。
そして山の上の形相は完全に冬だ。
その後もガトックと2人で快調に歩く。
何度か休憩してまいちゃんとアリーナを待つも、なかなか合流できない。
ガトック曰く、長い休憩を取るのは体が冷えてしまって良くないとのことなので、先に向かうことにした。
彼はその後も食べ物を持っていない自分に干しブドウを分けてくれたり、険しい道に来ると「大丈夫?」と声をかけてくれた。
紳士的で頼りがいのあるナイスガイだ。
綺麗な川原を抜けるとひたすら上り坂が続いた。
しんどい。息が上がる。
登っても登ってもまだ上がある。
しかも何度も川や水たまり越えがある。
その度に滑って水に落ちそうになる。
というか実際何度か落ちた。
この時点でやっと「ここは自分などが挑んでいいコースじゃない」とはっきりと悟った。
もう靴も靴下も泥水でぐちゃぐちゃだ。
だがしかし、何度も言うが、もう遅い。
ここまで来たら1分でも1秒でも早くキャンプサイトを目指すのみ。
歯を食いしばって登り続けていると、雨が降ってきた。
ガトックが「レインウェア持ってる?」と聞いてきたので「傘しか持っていない」と言うと、「いやいや傘ってお前!」と笑われた。
今思うと嘘みたいだけど、この時の自分は本当に傘しか持っていなかった。救いようのないバカだ。
このときは幸いにも風のない穏やかな雨で、傘でもなんとか雨しのぎに事足りた。
しかし片手が塞がった状態のトレッキングは危険極まりないので傘はほんとにありえない。
ついでに言うと片掛けバッグも手提げバッグもダメ絶対。
登り坂を越えて、やっとキャンプサイトの看板が見えた。
なんとカフェやバーの表示があった。
こんな山奥にそんな文明の象徴が存在するわけがない。
疲れで意識が朦朧としていた自分は、この案内自体が狐の化かしか何かじゃないかなどと一瞬思った。
でもそのまま進んで川を越えると、
着いた!
1日目の目的地、キャンプサイト!
※この写真は雨が上がった後に撮ったもので、到着時は雨が降っていました
キャンプサイトの近くで偶然運営スタッフさんにお会いできた。
名前の発音が難しくて覚えられずorz
「アトランタ」とかなり近い発音なので、仮に「アトランタ」で記載させていただきますすみません!
アトランタ(仮)はこのキャンプサイトで唯一英語が話せるスタッフさんだった。
ガトックはアトランタ(仮)に「この軽装の愚かな日本人を頼む(実際は「彼女ことをよろしく頼む」)」と言って、さらに先への道を尋ねた。
なんとこのままもう一つ先のキャンプエリアまで向かうと言う。
このとき自分はこいつ狂ってるなんてタフなガイなんだ!と驚きを通り越して呆れた。
だって20kg背負ってるんですよ?
自分なんかもう息も絶え絶えだというのに。
凄すぎる、信じられない。
でも後で知ったんですが、このルートを2泊3日で目指すのなら実はガトックの判断が正しかった。
何故なら、今いるキャンプサイトからアラコル湖までの道が、このルートの中で最も険しく時間がかかるからだ。
2日目中にアルティン・アラシャンを目指すなら少しでも前に進んでおく必要があったのだが、このときの自分はまだそれを知らなかった。
そしてそもそも、キャンプ装備を一切持っていない自分は、次のキャンプエリアで夜を明かすことは不可能だった(とこのときは思っていた)。
別れとお礼を告げた後、ガトックは颯爽と次のキャンプエリアへ向かっていった。
ガトック、本当にありがとう! 君がいたから乗り越えられた。
その後アトランタ(仮)がテントの中に案内してくれ、「寒いだろう」と言ってジャケットを貸してくれ、「お腹が空いているだろう」と言ってチャイやお菓子を出してくれた。
実際雨のキャンプサイトはとても寒く、食べ物も持っていなかったので空腹だった。
申し訳なくて、ありがたくて、何度も「ありがとう、ごめんなさい」と言うと、アトランタ(仮)は「気にしなくていいよ、君だけじゃない。日本人はここにはあまり来ないけど、来るときは大抵軽装だから(笑)」と言った。
日本人が浅はかだというイメージを強く上書きしてしまった。
改めて自分の愚かさを呪った。
そんな自分お落ち込みなど知らず、アトランタ(仮)をはじめスタッフたちはとても暖かく自分をもてなしてくれた。
次から次へとお茶を入れてくれ、パンやお菓子を出してくれた。
山の上でまさかこんなもてなしを受けるとは想像もしなかった。
そして「なるほど、これが看板にあったカフェ兼バーか」と悟った。
1人、程よく酔っ払った様子のおじいちゃんがいて、何やらロシア語で熱心に話しかけてくるがさっぱりわからない。
そのうちアトランタ(仮)が通訳してくれて、曰く「彼は今日とても機嫌がいいから、君に特別な石をあげるそうだよ」と。
光にかざすと緑色に光る。
なんだこりゃ。
水晶の類だろうか。知識がないのでわからない。
それ以前に本当にもらってしまっていいんだろうか。山の産物じゃ?
誰かこの石についてわかる方いらっしゃったら教えてください。
キャンプサイトには1人だけ子どものスタッフがいた。
名前はクルザナ。
お茶やお菓子を持ってきてくれたり、トイレに案内してくれたりする。
この女の子がもう、殺人級に可愛くてですね、
この日はほとんどずっとこの子と遊んでた。
自分は子どもは苦手なんですが、iPadを持っているだけで大抵人気者になれる。
ピアノ弾かせたり動画撮ったり絵を描かせたり。
そしてそのクルザナが描く絵が、
最終的には謎の風船投げ合いゲームに付き合わされ、彼女独自のルールにより80対0のスコアで負けるという大役も成し遂げた。
そのおかげか何かわからないがすっかり懐いてくれた。
そうこうしているうちに、まいちゃんとアリーナもキャンプサイトに到着した。
よかった!!!!
もう会えなかったらどうしようかと思った。
アリーナは寝袋を持参していたので、アトランタ(仮)は2人分の寝袋を用意してくれた。
テントは1人250ソムで、寝袋は無料でいいと言う。
そもそも寝袋はレンタル用ではなく、ここのスタッフ用のものを自分たちのために特別に貸してくれたのだ。
改めて申し訳なさでいっぱいになった。
それにしてもここの人たちは何故こんなに自分たちに親切にしてくれるんだろう。
この後ウォッカまでサービスですすめてもらってしまった。
お酒がいけるクチのまいちゃんは「とても美味しいウォッカだ」と言っていた。
さらにここにはなんと、
スチームサウナもあった。
※自分のデジカメではこの写真が限界でしたすみません。。
夜のキャンプサイトは恐ろしく寒く、足先まで冷え切っていたので本当にありがたかった。
このスチームサウナのおかげで、身体を温めた状態で眠りに入ることができた。
サウナには他のトレッカーたちも集まっていた。
アリーナが明日中にアルティン・アラシャンまで向かう予定だと話すと、ほぼ全員が口を揃えて「ハードすぎる」「不可能だ」と言った。
え、マジで…?
このときやっと、自分たちの計画が非現実的である可能性に気づき始めた。
でもテント装備も食糧も持っていない自分たちは、もう一晩途中で泊まることはできない。
なんとしても明日中にアルティン・アラシャンまで辿り着くしかなかった。
(で、実際は辿り着けませんでした)
雨が止んでから、テントの外に出て改めて景色を眺めると、キャンプサイトはとても美しい場所にあった。
こんな場所で一泊できる自分は幸せだと思った。
川がなんとも不思議な色をしている。クリームのような絹のような。
夜自分たちのテントに入ってからも、クルザナがテントに来て遊んで過ごした。
こんな山の奥に子ども1人で、さぞ淋しいだろうなと思った。
今だけたまたま来ているんだろうか。お母さんはどこにいるんだろうか。
言葉が通じないので何も聞けなかったけど、とにかくただひたすらに可愛かった。
ドゥマゲッティで買ったブレスレットをあげたら、ブカブカだけど腕にはめて喜んでくれた。
こうして明日のトレッキングの不安を抱えたまま、1日目の夜が更けていった。
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