Blog, 出発前_雑記
カラヴァッジョとの邂逅
世界一周中にやりたいことの一つが、「聖マタイの召命」を直に観ること。
もちろん、カラヴァッジョが手がけた他の絵も可能な限り観てみたいと思っていた。
でもそのときはまさか、日本にいるうちに観れてしまうとは思わなかった。
というわけで、日伊国交150周年記念「カラヴァッジョ展」(国立西洋博物館)行ってきた!
この企画展ではカラヴァッジョの直筆画がなんと11点も来日している。
ちなみに現存するカラヴァッジョの絵は60点強で、現在は世界各地に散らばって所蔵・保管されている。
当然、壁画とか輸送不可能のものも含まれる。
要するに、移動可能な絵のうち11点も一度に観れてしまうのはマジで凄い!
しかも日本で!
東京に住んでてよかったよー\(^o^)/
国交150周年オメー\(^o^)/
なんか偉そうに説明しちゃったけど、決して有識者でもなくただの素人ファンです。
以下、素人ファン的感想を興奮そのままに書き殴ります。
もう最高に良かった。今思い出しても鳥肌が立つほどに。
まず、今まで画面や紙面を通してしか会えなかった対象が、確かに目の前に在るという感動。
そしてそれ以上に、かつて確かに、この絵の前にカラヴァッジョが居たのだという感動。
マニエリスムからバロックへ移行していく当時のローマに、まるで自分も来てしまったような。
カラヴァッジョと同じ空間の中で、同じ空気を吸ってしまったような感覚。
これはもうただの自己陶酔・自己催眠なんだけど。
絵はどれも、画面や紙面を通して何度も観てきた作品なんだけど、生で観るとまた大分印象が変わった。
カラヴァッジョと言えば、当時としては異質なまでのリアリズム、特に「醜さ」や、ある種の「残酷さ」を正面から描くのが印象的だった。
でも作品を直で観ると、意外にも、「醜さ」よりもただひたすら「美しさ」を強く感じた。
なんだろう、線の流麗さと、陰影から生まれる質感によるものなのかな。
肌に浮き上がる血管や、老人の皺の一本一本までもが、とても綺麗だと思った。
私は今まで、カラヴァッジョは人がつい目を背けたり隠したくなるものをあえて皮肉って描くある種「偏屈者」だったのかなと思っていた。
でも実物を目の前にすると、この人はもしかしたら純粋に、「醜」の中にこそ「美」を見出していたのかもしれないと感じた。
宗教絵画としては、理想化されて然るべき神やその世界も、あえて「人間世界的」に描いた点が革新的だったカラヴァッジョ。
この点も、私は「神と人間は同じ(近しい)」的なメッセージなのかなと単純に思っていたけど、実物を観ると、むしろ「現実世界の中にこそ神は確かに存在する」というメッセージに感じた。
いやほんと、ただの一個人の感覚であって、なんの根拠も論拠もないんだけど。
あと、何といっても構図がスゲー。。
実寸で生で観ると、改めて雷に打たれる。
なんて言えばいいんだろう、漫画やアニメーションで、実写では絶対不可能なカメラワークを見せつけられて、度肝抜かれるときと似たような感覚。
この「メデューサの首」とか、盾の凸面に紙貼って描かれてるから、画面で観るのと生で観るのとで遠近の印象が全然違うんだよね。
ああ、やっぱり聖マタイも絶対生で観たいなぁ。
教会の壁画なんて、建造物の空間や雰囲気まで絶対計算して描いているはずだし。
しかもあれ3作品セットで三面鏡のように配置されていて、聖マタイは左端だから、実際は真正面から観れないんだよね。
あそこで三面鏡スタイルで観なきゃわからないことが必ずあるはず。
まさしく「その地その空間」でなければ得られない経験がある。想像するだけでドキドキする。
そして、神憑った構図から生まれる、まるで一瞬を切り取ったかのような「劇的さ」。
リアルなのに、写真とは明確に違って、あくまで物語のワンシーン、しかもターニングポイントであることを感じさせる。
観客にとっては、今まさに目の前に起きていることのように感じられて、さらにこの後絵の人物たちがどうなっていくのかまで想像させられてしまう。
なんでこんな構図が、こんな絵が描けるんだろう。
カラヴァッジョの目には、世界はいつもこんなに劇的に映っていたんだろうか。
この企画展、カラヴァッジョの影響を受けた所謂「カラヴァジェスキ」たちの作品や、カラヴァッジョに関する当時の文書がそのまま多数観れるのもすごく良かった。
カラヴァジェスキの作品もどれも面白くて、個人的に一番気になっているのが、当時としては珍しかった女性の画家アルテミジア・ジェンティレスキ。
この人の絵も色々と興味深くて、なんていうか、私の感覚だとやけに「男性的」な絵なんだよな。
ナチュラルにそうなのか意図的にそうなのかが気になる。送った人生も波瀾万丈だし。
当時の文書までそのまま来日してるのもすごい。
状態すごくきれいで、文字も肉眼ではっきり読める。
紙とインクってすごいんだな。ヨーロッパの乾燥した気候のおかげもあるんだろうか。
それにしてもカラヴァッジョの人生が破天荒すぎる。
身近にいたら、相当危ない、絶対友達になれないタイプ。
それでいて描く絵がバカうまっていうのが、意外なような、逆にしっくりくるような。
最後に、地味に「額」もすごかったっす。
額がどれも超かっこいい。
ああいう額って幾らくらいするんだろ。
あと音声ガイドの北村一輝さんの声も良かった。
ああもう、早くイタリア行きたい! ローマ行きたい!
「自然そのもの以外に比肩しうるもののいない画家」に恋い焦がれて。
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