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このループから抜け出せない
約2年前、住所不定無職になり、幾つかの国をしばらく1人で周っていた自分は、「これからはどんな場所でもなんとかやっていけるだろう」と特に根拠のない自信を持つようになっていた。
というのも、旅に出る前は毎日がどうにも息苦しくて、自分の居場所がどこにも無いような気がしていた。
なかば逃げ出すように日本を出た自覚があった。
でも旅が終わる頃には、そんな状態は克服できた気がしたのだ。
実際、帰国して間もない頃は、かつてのような息苦しさは全く無かった。
新しい環境でも自分の居場所をつくれたと思うし、劣等感に苛まれたり、見栄を張ったりすることもなくなった。
でも帰国から1年くらい経った頃から、違和感を持ち始めた。
また少しずつ酸素が薄くなっていくようだった。
日本はびっくりするほど安全で、清潔で、便利で、とにかく快適だ。
いろんな国を訪れて「世界は広い」と思い知ったけど、それでも「こんなに快適な国は地球上でただ一つなんじゃないか」と思っちゃうほどに。
そんな日本という国を築き上げるのに、先人たちのどれだけの知恵と工夫と努力があったことだろう。
なのに私はその「ありがたさ」に、いとも簡単にかまけてしまう。
稀有だとわかっている筈なのに、すぐに「あって当然」と思ってしまう。
やがてその快適さが少しでも損なわれると、それだけで不満を持つようになる。
それを自分以外の誰かの不備や失敗のせいにしたくなる。
ネチネチと責め立てたくなる。
「私は悪くないのに」と言いたくなる。
自分は決して失敗するまい、誰からも責められるまいと、自分で自分を膜で何重にも覆っていく。
息がとんどん苦しくなる。
いつのまにか、膜の中にいる真っさらな自分がどんな姿だったか、自分でもわからなくなっていく。
かつてのように、劣等感に苛まれて逃げ出すような後ろめたさは無くなった。
ただ、膜の中の自分が「お前が闘う場所はここじゃない」と言っている気がする。
そう感じてしまってからはもう、もう一度旅に出たくてしょうがなくなった。
今はただひたすら、旅をしていたあの時間が恋しい。
暇さえあれば思い出している。
かいだことのない匂いの街。
見たことのない色の海。
聞いたことのない言葉の歌。
人生で一番、思いっきり息ができた9カ月。
そうしてしばらくしたらまた、故郷が恋しくなるんだろうか。
ずっと隣の芝生を羨んで、無いものねだりをし続ける人生なんだろうか。
放浪して、安住を求め、また放浪する。
私はこのループから抜け出せなかった。
とりあえず35歳の現時点では。
コメント2件
シモーネ | 2018.11.16 23:24
すぎさん、もう6年目になるんですね〜!
新しい環境を迎えるときのワクワクが、時間とともに消え去っていきますよね。
周りには、どんな環境でも自分らしく生き生きしているよう見える人もいて、自分が無い物ねだりしすぎなだけなのかなーと思いもします。。
私もまた、日本で働きたくなったり、組織に属したくなったりするかもなぁ。
イギリス北部、是非行きたいです!
すぎさんもフィリピンにお越しの際は是非!
今度は私が案内しますよー!^ ^
すぎ | 2018.11.16 5:35
ヨーロッパ生活も六年目を迎え、七年目も帰る見通しは立たず、最初はあんなにワクワクしたのになんだか退屈です。忙しいのに退屈です。
やり方や考え方は違いますが、なんだか共通点もありますね。今は日本で働いてみたくなってきました。それが終わったら、今度は会社辞めて違うことやってみよーかなーとか。
イングランド北部へお越しの際はお声がけください!今度はデュッセルドルフの真逆で、日本人周りに全くいません。
今後の更新楽しみにしてます。