Blog, モロッコ
混沌は芸術と化す
世界屈指の迷宮都市フェズ。
中世のイスラム都市をそのまま残す旧市街は、未だ自動車が入り込めないほどの細かい小道が張り巡り、まさに迷路と化している。
旅行者の間では「google mapが意味を為さない街」としても有名。
地元のガイドをつけない限り、迷わずに散策することは不可能と言われている。
マラケシュ同様、フェズの旧市街も丸ごと世界遺産になっている。
今日はそんなフェズの街を、夜行バスの時間まで可能な限り散策してみる。
宿をチェックアウトし、荷物を預かってもらって出発。
迷路を制する上での定石は、上から全体を俯瞰することだ。
まずは丘の上に登ってみることにした。
迷宮と言えども、上に行くのは坂をひたすら登っていけばいいので難しくない。
旧市街を望む丘の上には、12〜15世紀にモロッコを支配したマリーン朝の墓地跡がある。
この遺跡も雰囲気があって見応え十分だけど、ここに来たら何といっても、
ものすごくごちゃごちゃしているのに、一周まわって綺麗だと思った。
芸術的ですらある。
現代社会に取り残された中世都市。
でも衰退によって景観が維持されたヨーロッパの古都とは違い、この街は一度も活気を失うことなく迷宮であり続けてきた。
街をぼーっと眺めていると、それがとても奇跡的なことに思えた。
旧市街の反対側の景色も素晴らしい。
城壁の外に出るとすぐ大自然が広がっている。
丘から降りて、いよいよ迷宮の中へ。
この迷宮の散歩がめちゃめちゃ面白い!
ずっと一方向に歩いていたつもりでも、maps.meで現在地を確認するといつの間にか全く逆に進んでいたりする。
なるほど、これは確かにリアル迷路だ。
しかもその迷路がそのまま街になってしまっているんだからスゴイ。
マラケシュに負けず劣らず、ガンガン話しかけてくるモロッコ人。
適当に会話したり振り切ったりしながら歩く。
完全に迷ったところで、10代半ばくらいの少年が「マダム、こっちだよ」と勝手に案内し始めた。
ああ、これは後でお金請求されるパターンだなと思いつつ、
少年の進む先に続く道があまりに魅力的で、無視することもできたのに、つい付いていってしまった。
なんだか素敵なものが見れそうな予感がしたのだ。
右に行ったり左に行ったり、階段を登ったり坂を降りたり。
少年は明らかに目的を持って歩いているようだったけど、道が全くわからない自分からすると、ただ単にめちゃくちゃに歩かされているとしか思えなかった。
歩けば歩くほど迷路の奥深くに迷い込んでいくようだった。
でも少年はこちらの不安など御構いなしに、「マダム、ここはモスクだよ」「ここはハマムだよ」などと案内しながら進んでいく。
ここはハマムの入口らしい。
言われなかったら絶対わからん。。
何やら大きな家の中に入れてくれた。
モロッコの伝統的な邸宅で、現在は音楽演奏の会場に使われているんだとか。
旧市街のど真ん中から見下ろす景色もすごい!
こうやって見ると、思っていた以上に高低差があることがわかる。
邸宅を出てまたしばらく歩くと、旧市街入口のブージュルード門に着いた。
どこをどう歩いて辿り着いたのか全くわからない。
この少年は全部の道を記憶しているのかと思うと、純粋にすごいと思った。
自分1人ではきっと見れなかったものを、たくさん見せてもらえた。
快くお金を払おうとした。
でも、このとき自分はたまたま100ディルハム札しか持っていなかった。
受けたサービスの対価として、100ディルハムはさすがに高額すぎると思った。
今泊まっている宿の一泊よりも高い。
仕方なく、手持ちのコインを全部出して渡そうとした。
でも少年は納得してくれなかった。
これじゃあ少なすぎる、コインではなくビルをくれと言い張った。
でも100ディルハムしか持っていない、これだと多すぎると言うと、少年は自分の手からひったくるように100ディルハム札を取り、「サンキューマダム」と言って逃げるように去っていった。
一瞬の出来事に、思わず呆然としてしまったけど、すぐ怒りが込み上げてきた。
サービスに満足して、お互いが納得のいく金額を払いたいと素直に思ったのに、その仕打ちがこれかと。
今日までモロッコで会ってきた人たちがみんな親切だったから、余計にショックだった。
でも、自分ももっと毅然とした態度を取るべきではなかったか。
そもそも高額紙幣しか持っていない状態で付いていったのも迂闊だったし、相手が少年だからと、どこかで油断してはいなかったか。
それに、そもそもこういうシチュエーションでチップをどう払うべきか、ちゃんと考えられていなかった。
そもそもモロッコという国でチップはどのように捉えられているのか、
観光客である自分はそれにどう対応すべきなのか、
そもそも自分は何に対してどれほどの額を払いたいのか、あるいは払いたくないのか。
フェズ初日にも感じたモヤモヤが、このことでさらに大きくなった。
こうしてこの後もしばらく、幾つもの「そもそも…」を一人ブツブツと悩み続けるのだった。
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