Blog, オーストリア

まだ何かを決めつけられるほど旅をしていない

2016/9/25
リンツ

 
10時起床。
よく寝た。寝すぎた。

今日はリンツの街の中を歩いてみる。
リンツはウィーン、グラーツに次ぐオーストリア第3の都市らしい。
実はリンツについてはほとんど何も知らない状態で来た。
ただ道程の途中にあったから寄ってみたという感じだ。
なんかもったいない気もするけど、こういう行き当たりばったりなのもたまにはいいかなと思う。

だからそのノリのまま、行き先も決めず地図も見ずに歩く。

 



そんな自分の無知を恥じてしまうくらい、リンツは素敵な街だった。
あんまり観光地でもなさそうだし、名前すら知らない街だったので意外だった。

 



雰囲気としては、ハンガリーのショプロンを、あのひっそり感を維持したまま都会にした感じだ。
ショプロン同様人が全然いない街だった。
「観光客が」以前に「人が」驚くほど少ない。
なんでだろう。日曜日だったからかなぁ。
街にとって良いことなのかはわからないけど、自分としては静かに歩けるしタイムスリップ気分も高まるし嬉しい限りだった。

 

坂を上の方に歩いていくと何かの博物館に着いた。
調べてみたところ、この一帯はかつてのリンツ城の跡地で、その中に歴史文化博物館があるらしかった。
城跡のエリアは入場料無しで入れるようだったので入ってみた。

 

本当だ、お城の跡がある

 


とても綺麗なお城だった。
跡しか残っていないのに「綺麗」というのも変な感じだけど、本当に「綺麗だな」と感じた。
「遠い昔に忘れ去られて、でも実は秘密の庭師が密かに守り続けてきたんです」って感じの。

 

とても広い敷地で、全体が公園のように整備されていた。
上へ上へ登っていくと一番高台に着いた。

 

ドナウ川とリンツの街。
こうしてドナウ川を眺めるのはブダペスト、ヴァッハウに次いで3都市目だ。

 

この景色を見た瞬間「あ、懐かしい」と思った。
地元（熊本県人吉市）に似ているのだ。
いや、雰囲気は全然違うんだけど
・丘の上の城
・現在残っているのは跡だけ
・川と城下町を見下ろす構図
が共通していた。

 
ヨーロッパで「懐かしさ」を感じたのは初めてな気がする。
アジアを旅行していたときは、結構頻繁に懐かしさを感じていた。
ドゥマゲッティの田んぼ、ホーチミンのお寺、アユタヤの川原。
きっと自分の中に根付いているものとアジアの文化が近しいんだろう。

でもヨーロッパに来てからは異世界感ばかり感じていた。
たとえば、お寺に来るとなんかホッとするし「お祈りしよう」と思うんだけど、教会に来ても異教徒の自分がお祈りなんかしたら不謹慎なように感じてしまう。
勝手がわからないまま「他所様」に図々しく上がり込んでいるような、一種の「居心地の悪さ」をいつも感じていた。

でもこのときはすごく自然に「懐かしい」と思えたんだよなぁ。
このことになんだかやけに感動してしまい、しばらくじっとこの景色を見ていた。

 
実は旅を止めようか迷っていた。
そもそもフィリピンを出てからずっと迷っていたけど、最近は特に「移動→観光」をただ繰り返すだけの自分の旅行に意味を見失いかけていた。

 
理由は大きく2つあった。

一つは、旅を終えてからの目標が（短期的ではあるけど）見つかっていたことだ。
そしてそのためにやるべきこと（英語を習得したりお金を貯めたり）も見えていた。
それを考えると、今こうして仕事からも勉強からも離れて旅行していることが、目標達成への道をどんどん遠ざけてしまっている気がした。
つまり、意識がつい帰国後の目標に向いてしまい、せっかくの旅行にいまいち集中できない状態が続いていた。

これが自分1人の個人的な目標だったらもう少し柔軟に切り分けられたのかもしれないけど、これは同時に大切な人との約束でもあった。
そのことは、世界一周に出発する前の自分の気持ちを大きく変えてしまった。

出発日の気持ちは今でもありありと思い出せる。
人生ではじめて完全な自由を得たと思った。
予定は完全に未定で、全ては自分の心一つだと。
純粋無垢に、今思うと能天気なほどに、ただただワクワクしていた。
だからこそ不安や恐怖はあっても「迷い」はなかったのだ。
でも今はもうその意味での「自由」を持っていない。

こういう状況を全く想定していなかったわけではない。
むしろ世界一周の経験を経て何かを見つけられたり、少しでも良い方向に自分を変えられたらいいなぁと思っていた。
ただ想定外だったのは、それがあまりも早すぎたことだ。
留学中の、むしろ旅がまだ始まってすらいないうちに、帰国後の予定を決めてしまうことになるとは。
もっとざっくばらんに言うと、自分と全く違う状況の人にばったり惚れてしまうとは。

 
もう一つの理由は、自分が世界一周によって知りたいと思っていたことは、実際には短期間で一度に得られるようなことじゃないと気づいたことだ。
フィリピンで4カ月過ごしたことで、一箇所にほんの数日しか居られない旅のスタイルに懐疑心を持ってしまった。
そして実際旅を始めてみて、フィリピンに居た頃以上の濃い時間は得られていないと実感してきてもいた。

そもそも4カ月だって足りないと感じていたくらいなのだ。
いや期間の長さ以前に、自分自身の姿勢の問題かもしれない。
フィリピンにいた頃、彼氏に「東京よりドゥマゲッティの方が住みやすい」というような意味のことを言ったとき、「君はその場所の良い面しか見ていない」「きっと北朝鮮を旅行しても『いい国だった』と言うと思うよ」と返された。
返す言葉もなかった。ほんとその通りだなと思った。
4カ月過ごしても自分は何も見えていないに等しいと気づかされた。
病院対応で味わったときと同じような無力感を覚えた。

 
でも今ドナウ川を見ながらふと、「何も見えていなかった」という無力感さえも、貴重な気づきに思えた。
罪レベルに無知な自分にとっては、そのスタートラインさえも遠かったのだ。

数年前までの自分は、
「海外は危ない」
「日本が一番いい国」
「日本に生まれた自分はラッキー」
と本気で思っていた。
別に上記が間違いだと言いたいわけじゃない。
ただ、海外にほとんど出たこともなかったくせにそう思い込んでいたのは怖いことだなぁと今は思う。
そもそも
「1人で海外旅行なんてできるわけない」
「英語なんて限られた人にのみ与えられた特別な才能だ」
とさえ思っていた。

そして少し前までの自分は、たとえば
「日本で目にする報道と海外でのそれがどう違うか」
「一歩外に出たときに日本がどう見えるか」
「他の国の人が日本や日本人をどう思っているか」
といったことを知ろうともしなかった。
いや、というよりは多分、日本にいながら日本語で間接的に見聞きする情報だけで「知っているつもり」になっていた。
別にこれらのことは、日本にいてもきっと自分の努力次第で知ることができたと思う。
でも自分の場合は、家も仕事も捨てて、「世界一周」なんてぶっ飛んだ手段で飛び出しまでして、やっと気づいたのだった。

 
なんか迷いが晴れた。
予定通り12月までは旅を続けよう。
どうせ全てを一度に得ることはできないのなら、今止めても後悔するだけに思える。
自分はまだ何かを決めつけられるほど旅をしていないし、目標に全速前進するのは旅の後でも遅くないはずだ。
…多分。

 
1人で勝手に考え込んで勝手にすっきりして、晴れ晴れとした気分で城跡を後にした。
明日からもっと旅行を楽しめる気がする。

 
 
ブログランキングに参加しています！
↓クリックをいただけると励みになります。

にほんブログ村

コメント12件

Name（必須）

E-mail：非公開（必須）

Comment

キャプチャコード *