Blog, キルギス

地獄のアラコル湖トレッキング3日目 〜まさかの素通り、そして下界への帰還〜

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2016/8/25
アラコル湖トレッキング3日目

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大変恐れ入りますが、前々々記事「アラコル湖トレッキング編の前に〜」を未読の方は、先にご一読願います。
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7時起床。
寒さのあまりほとんど眠れずに朝を迎えた。
一晩経っても全身の痛みは全く取れていなかった。
身体の節々からギシギシという音が聞こえるようだった。

 
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寒さと痛みに悲鳴をあげる身体に鞭打って、テントの外に出た。
朝のアラコル湖は昨日とはまた違った表情を見せていた。

 
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湖が見事な鏡面になっていた。
雪が残る岩山の映り込みがとても神秘的だ。
改めて「ここは人間が居ていい場所じゃない」という気がした。

湖のほとりで、オカリナを吹いているトレッカーを見かけた。

わかる…!
俺にはわかるぞお前の気持ちが…!

きっと「なんでオカリナなんか持ってくんだよ」「いらねーだろ」とか散々言われたことだろう。
その度に「いいんだよ、俺にはこれが必要なんだ」と言い返したに違いない。
そして彼は孤独な戦いを制し、今まさにその目的を達成し喜びを噛み締めているのだ。
おめでとう同士よ!!
お前の勝ちだ!!

(何の話だ)

 
身体が元気だったらアラコル湖の周辺を散歩したい所だったけど、とてもじゃないけど無理だった。
写真だと伝わりにくいと思うんですけど、そもそもめちゃめちゃデカイんですよアラコル湖
しかも湖はまさに山間の「穴」といった感じの地形なので、周りもひたすら坂と崖。
湖の周りを一周するだけでも丸一日くらいかかっちゃうんじゃないかなぁ。
(そもそも一周できるのか?)

 
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朝食にミルク粥をいただいた。
山でいただく温かい手料理は本当に沁みる。
大げさじゃなく「生きててよかった」と思わされる。

 
朝食後、料金をお支払いして出発。
テント泊、夕食、朝食合計で確か1,050ソムくらいだった。

ここまでガイド兼ポーターをしてくれたチンギスとはここでお別れ。
力持ちで優しくて明るくて、くじけそうなときは片言の英語で励ましてくれた。
彼のおかげで、無事辿り着けただけじゃなく、道中を楽しみながら歩くことができた。
きっともう会えることはないんだろうなと思うと、切なさがこみ上げてきた。

チンギス、本当に本当にありがとう!!
微力だけど、あなたたちにもらった優しさをブログを通して日本人に発信するよ。

 
最初の関門は、アラコル湖を囲む山の登り道。
まずこの頂上に辿り着かないと山を下ることができない。

で、その頂上までがまた

 
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遠い上に険しい。。
ここ、道なんですよ。
いやマジで。
しかもケルンがわかりにくくて道を間違えまくる。
初っ端から難所すぎる。

 
ぜいぜい言いながらなんとか頂上に立つと、

 
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目に入ったのはアラコル湖の全景。
雪解け水の出どころと、ハート型の小さな池を見通すことができる。
もしアルティン・アラシャン側から登っていたら、最初に見えたのはこの景色だったのかもしれない。

 
正直、この時点でもう息も絶え絶えだった。
後で調べたら、この頂上地点は標高3,850メートルくらいらしい。
ぬあああ富士山超えとるやないか!
そりゃ息も上がるわ!

(標高すら調べずにやってきた愚かさたるや)

でももう後は下るのみ。
少なくとも重力という敵はもういないはず。

ところで下りの道が見えないんだが、一体どこから…?
まいちゃんと一緒に訝しがっていると、アリーナが近くにいたロシア人のトレッカー集団に聞いてくれて、彼らが教えてくれた。

 
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「この坂を下りていくんだよ」と。

 
いやいやいやいや…
冗談でしょ?
絶叫滑り台じゃないんだから。

 
もう正直泣きそうだった。
ここで遭難したってことにしてヘリコプター呼んでもらおうかとか一瞬思った(←愚)

でも下りるしかない。
下りないと帰れない。

 
ここからはそのロシア人トレッカー集団が助けてくれた。
軽装すぎる我々を見て、とても自力では下りられないだろうと心配してくれたのだ。

まず、片手が塞がっているのは危ないので、自分が持っていた手提げ袋をバッグに結び付けて、両手を使えるようにしろとアドバイスしてくれた。
さらにまいちゃんにはトレッキングポールを、自分にはグローブを貸してくれた。
その後ベテラントレッカーが先頭に立って下り、ポールと靴で足場をしっかり固めてくれて、自分たちはそれを追いながら下りさせてもらった。
それでも片掛けバッグで重心が不安定だった自分は何度もバランスを崩し、最終的にベテラントレッカーの1人が自分のバッグも持ってくれた。

怖さの観点で言うと、全ルートの中で、この頂上からの下りの行程が一番怖かった。
恐怖で足がガクガク震えた。
「死にたくないー」「お母さーん」とかブツブツ呟きながら死に物狂いで下りた。
それでもベテラントレッカー集団の助けのおかげで、なんとか下りきることができた。

 
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下りきった後に振り返って撮った写真。
真ん中の細い薄い筋の道を下りてきた。
頂上に小さーく点のように写っているのが人。
いやほんと、絶叫滑り台じゃないんだからさ…

 
ちなみに我々は、キャンプサイトから頂上に上って反対側に下りてくるだけで、なんと約3時間もかかった。
アラコル湖からの直線距離はほとんど遠ざかっていないというのに。
ほんとハンパないアラコル湖。

 
これでやっと難所は越えた!
あとは緩やかな下りをひたすら歩くのみ。

しかしここからアルティン・アラシャンまでも、道こそ険しくないものの、かなり遠かった。
これはアルティン・アラシャン側から登る人も大変だろうな…
すれ違うトレッカーたちに「グッド・ラック!」とエールを送った。

 
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途中途中の景色が素晴らしい。
昨日と違って休憩が怖くないのがありがたい。

 
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4時間くらい歩いただろうか。
なんかアルティン・アラシャンぽくなってきた!

そして遂に、

 
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見えたー!!
これがアルティン・アラシャン!!

遂に着いた!
1日遅れだけど!

 
結局例のロシア人トレッカー集団は、自分たちよりずっとペースが速いにもかかわらず、アルティン・アラシャンに着くまでの間ずっと、難所に差し掛かる度に自分たちを待っていてくれて、都度歩きやすい道を教えてくれたり、荷物を持ってくれたり、ポールを貸してくれたりした。

この3日間で何度思わされただろう。
どうしてこんなにも愚かな自分を、こんなにも助けてくれるんだろう。
何の見返りも無いというのに。
自分が逆の立場だったら、絶対見て見ぬ振りをしてしまう。
彼らはただ一言、「こうやって助け合うのはロシアでは普通のことだよ」と言った。
でも助け合うも何も、全くイーブンじゃない。
恥ずかしくて消えてしまいたくなった。
でもそれも彼らに失礼な気がした。

 
アルティン・アラシャンに着いたのは16時過ぎだった。
元々2泊3日で予定を組んでいた自分たちは、翌日は各々すでに別の予定を入れてしまっていた。
でもこのままカラコルまで行くのはもう時間的に厳しい。
アルティン・アラシャンに1泊するしかない。

しかし宿のスタッフに聞いてみたところ、なんとアルティン・アラシャンからはタクシーでも帰ることができるという。
カラコルまでは4,000ソム(¥6,036くらい)。

貧乏バックパッカーにはかなり大きい出費だ。
でも自分にはどうしても帰らないといけない理由があった。
実は初日に生理が始まってしまい、その薬を2泊分しか持ってきていなかった。
不幸にも今回の生理は腹痛が激しく、明日その痛みが襲ってきたらとても歩けないと思った。
そして身内に無事を連絡したかった。
ネット環境がないここにもう1泊すると、誰とも連絡が取れない。
予告なしに連絡が途絶えると彼らが心配することは目に見えていた。
大切な人たちに余計な心配を掛けないことは、自分が出国前に立てた誓いの一つだった。

もうこれ以上危ない橋は渡れない。
お金で買える安心は買おう。

こうして、アルティン・アラシャンまで来たというのに温泉にも入らず素通りすることが決定した
一体自分は何をしにここへ来たのだろうか^ ^;

 
各々タクシー代を考慮した結果、まいちゃんとアリーナの2人はアルティン・アラシャンの宿で1泊し、自分だけカラコルに戻ることになった。
まいちゃん、アリーナ、一緒に登れて嬉しかった!!
1人だったらここまで来れなかった。本当にありがとう!!
カラコルでまた会おう!

 
で、ここから4駆のタクシーで麓に降りたわけですが、最後にド級の恐怖が待っていた。
このタクシーが、人生史上最も怖い運転だった
それまではカンボジアのプレアヴィヒア行きが1位だったけど、軽く10倍くらい上書きされた。

アルティン・アラシャンまで行かれたことがある方はわかると思うんですが、麓からアルティン・アラシャンまでも結構な悪路なんですよね。
もうコントかってくらい揺れる揺れる。
「ディズニーシーのインディジョーンズをリアル世界に移植して10倍くらい揺らした感じ」と言えば少しは伝わるだろうか。

当然ガードレールも何もないので、ドライバーのおじちゃんがハンドル捌きを一つ間違えれば谷底行き。
山はある意味自分の足に全てがかかっていたけど、今はもうおじちゃんに命を託すしかないので、山とはまた違った恐怖に襲われた。
だからこのときはもう「死んでたまるか」というより「神様どうか助けて」って気持ちだった。

でもおじちゃんにはこの山道の運転は普通のことらしく、なんと運転しながらしょっちゅう片手で携帯をいじっていた。
マジで勘弁してくれ!
多分ここポケモンいないって!
しかも何故かシートベルトがないんだよね。あんまりだ。

それが45分くらい続くもんだから、最後はもう恐怖も麻痺して、何かが一周してちょっと楽しくなってしまっていた。
多分子どもとかはこのコース大好きだろうなぁ。
並のジェットコースターよりもエンターテインメントだった。

 
麓に着いて別のタクシーに乗り換え、カラコルの宿に戻ってきた。
ああ、下界に戻ってきたんだと実感した。
なんだかアラコル湖にいたことが夢だったように思えた。
それくらい、この3日間は、あの山の上は、自分にとって別世界だった。
これを書いている今でも、実は夢だったんじゃないかと思いそうになる。

 
熱々のシャワーを浴びて、ドミトリーのベッドに倒れ込んで、死んだように眠った。

 
 
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2016-09-04 | Posted in Blog, キルギス4 Comments » 

コメント4件

 モグネル | 2016.09.05 5:39

初めまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
本当アラコル湖のトレッキングときたらw
私はアルティン・アラシャン側から入って残り50mくらいで諦めました←

勝手にカラコルバレーからの道が正解だった。。。と思ってたんですがどちらにしろあの死を感じる行程は同じだったんですね。
行く前にイレブンバックさんのブログ見たかったですw

 シモーネ | 2016.09.06 4:46

>モグネルさん
「モグネル メグル」のモグネルさんですか!?
わあああ読んでくださってありがとうございます!

ほんとアラコル湖ってヤツはまったくw
まさに死を感じるトレッキングでしたね( ´Д`)
踏み止まる勇気も偉大だと思います!
いやぁ今思い出しても鳥肌が、、、w

 モグネル | 2016.09.07 3:39

実はこっそりブログさせてもらってます。
出発前に準備編を読ませていただいて、
しっかり準備をされて出発されたシモーネさんとノー準備ぶっつけ本番の自分の差を感じ、勝手にリスペクトしておりました。
なにとぞ。

 シモーネ | 2016.09.07 3:59

>モグネルさん
うわあああめっちゃ嬉しいです…!
ブログやってて良かった! ありがとうございます!

ぶっつけ本番の方が凄いじゃないですか!
そして私は勝手にブログのネーミングセンスをリスペクトしておりました。
ブログ村アイコンになっているイラストも好きすぎて、初めて見たとき思わず「上手い!座布団10枚!」って呟きましたw
どこかでお会いできたらいいですねー!

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