Blog, モロッコ

ルール偏愛の呪縛

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2016/11/7
フェズ

 
民営バスは7時半頃にフェズに到着した。
なんとなく終点は新市街だろうと思って新市街のホテルを取っていたんだけど、バスは予想に反して旧市街まで行ってしまった。
しょうがなく客引きのおじちゃんのタクシーに乗って移動。
30ディルハム(¥327くらい)。相場より高い。

 
すぐ部屋に入って眠りたかったけど、チェックインは12時から。
ホテルの人はとても優しくて、荷物を預かってくれ、「よかったら朝食を食べませんか」とレストランに案内してくれた。

 
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ビュッフェ形式の豪華な朝食だった。
値段も60ディルハム(¥654くらい)と高級。
ここぞとばかりに食べまくった。

 
朝食を食べた後は、ロビーのソファでチェックインの時間を待ちながら、モロッコに来てからのことをぼんやりと思い出していた。

「世界三大ウザイ国」の称号を持つモロッコ。
(ちなみに他の2国はインドとエジプトだそうです)
でも実際に感じた印象は「ウザさ」というより「人懐こさ」だった。

そしてたくさんの人たちが無償の親切をくれた。
フェズで宿に案内してくれた子ども、メルズーガのベルベル人たち、ティネリールのタクシードライバー、カフェの店員さん。

でもフェズのメディナでは少年に100ディルハムも払わされてしまった。
今乗ったタクシーにも観光客価格を請求された。

 
ぼんやりとした頭で、自分が一体何にモヤモヤしているのかを考えた。

無収入バックパッカーにとって節約は旅の命と言える。
1円でも安く抑えられるものなら抑えたいのが本音だ。
だから安宿を探し回り、節食に励み、不便な陸路移動を選択する。
モロッコのように価格交渉制の国では、できる限り値切る努力だってする。

でもそれはこちら側の都合でしかない。
事実、幾らでも働ける環境のある日本人は、たとえ現時点で住所不定無職の旅行者であっても、モロッコの人たちと比べたら「裕福」と言えるだろう。
明朗会計の日本と違い、価格交渉制の国だからこそ、観光客に上乗せ価格を提示するのはごく自然なことなのかもしれない。

それにモロッコにはチップの文化がある。
これはモロッコに限らないことだけど、日本人、特にバックパッカーはチップを払わないことが多いと聞く。
日本にそもそもチップ文化がないことと、バックパッカーの場合は出費を節約したいのが理由だろうと思う。
現地の人や、現地の文化をちゃんと尊重しようとする旅行者からは、過度に値切ったりチップを払わない日本人旅行者は軽蔑されているとも聞いたことがある。

 
で、自分はどうだろうと振り返ってみた。

できる限り節約はしたい。
でも現地の文化も尊重したいし、「礼儀知らずだ」と軽蔑されたくもない。

言葉にするとそれだけのことなんだけど、なんだかやけに難しいことのように感じるのは何故なのか。

 
そこまで考えてはたと気づいた。
「そうか、ルールがないから難しいんだ」と。

自分はルールを欲しがっていたのだ。
チップが必要なら必要、不要なら不要。
必要な場合のチップ目安は何割か。
値切りはどこまでが適正でどこからが行き過ぎか。

そういうことさえ明確に決まっていれば、そしてそれを守りさえすれば、現地の人も旅行者もハッピーなのに。
面倒くささもウザさもきっと感じなくて済むのに。

 
でもモヤモヤは晴れなかった。
ルールで全てを済ませたがっている自分にも気づいたからだ。

秩序や効率を保つ上で、ルールを決めることが有効なのは間違いない。
でもあらゆる物事、特に人と人とのコミュニケーションは、画一的なルールだけでは成り立たない。
必ず想定外のことが起きるからだ。
それは大抵、もっと生々しくて、突拍子もなくて、理屈では説明できないようなことだ。

 
自分はルールを偏愛するあまり、逆に「ルールさえ守ればいい」と、それ以上のコミュニケーションを拒絶していた気がする。
ルール外の物事に対して無関心、思考停止に陥っていたのだ。

 
なんだかこうして文章にするとごくごく当たり前のことのようだけど、自分の場合は、モロッコというある意味「ルールを持たない国」に来たことによって、やっと自分自身の「ルール偏愛の呪縛」に気づけた。

 
改めて、物事の考え方、特に人とのコミュニケーションについて考えさせられた。
そしてようやくモヤモヤが少し晴れた。

今はこう思う。
年齢、性別、言語、国籍、人と人との間には多種多様な「壁」があるけど、自分はルールを欲するあまり、それを変に意識しすぎていた気がする。
人と深く関わりたいのなら、もっと本能的に、もっと生々しく接してもいいのかもしれない。
例えば「高い」と思ったなら別に値切ってみたっていいし、チップだって違和感を持ったまま無理に払わなくたっていい。
「礼儀知らず」だと思われたり、逆にこっちもそう思い返したりするだろう。
でもそこが本来スタートで、そこからお互いの文化の違いをとことん話し合ったり、喧嘩したり、理解し合うのがコミュニケーションなんだろうと思う。
ぶつかることを恐れて、理解しているフリして、モヤモヤしたままでいるよりも、なんだかずっと血が通っていて、真正面から向き合っている気がする。
もちろん、だからと言って何もかもルール度外視でいいというわけではないし、とことんぶつかりゃいいってわけでもないが。

 
そんなことをつらつらと考えていたらチェックインの時間になった。

 
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ホテル アイビス フェズ
シングル1泊 ¥4,026(booking.com予約)

スコットランド以来のシングルルーム。
なんて快適(´Д` )
晴れ晴れとした気分で、ここぞとばかりにダラダラ過ごした。

 
 
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2016-11-17 | Posted in Blog, モロッコ2 Comments » 

コメント2件

 モグネルボブ | 2016.11.17 22:52

日本って本当に特殊ですよね。
ヨーロッパに行って同じようなことを感じて、
日本は単一民族国家だからルールがある程度決められるのかなと思いました。
民族が多様化してくるともうその人たちに任すしかない部分が大きくなってくる気がします。

 シモーネ | 2016.11.18 9:45

>ボブさん
ほんとそうですね…!
たとえばイギリスは島国だし日本と結構似てるんじゃないかじゃなんて勝手に思ってたんですが、実際行ってみると全然多民族国家でしたね^ ^;
モロッコ、あまりに色々違いすぎて戸惑ってますが、ルールなしのコミュニケーションが逆にあたたかく感じられたりもして自分でも意外でした。
この歳になるまで気づきすらしなくて、今更すぎる気もするけど、勇気を出して飛び出してみて良かったなぁって思ってます。

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